ドミニク・オリー 略伝
ドミニク・オーリーDominique Aury (Anne Desclos) (ロシュフォール・スュル・メール Rochefort- sur-Mer、1907年9月23日 - コルベイユ・エソンヌ Corbeil-Essones、1998年4月26/27日)
アンヌ・デクロは英仏語を話す家庭環境でバイリンガルとして育ち、少女時代から英文学、仏文学の両方に親しんだ。リセ・フェヌロン、リセ・コンドルセを経てソルボンヌ大学で学び英語教師の資格を習得したあと、ジャーナリスト、翻訳家を職とすることを選びドミニク・オリーの筆名を用いるようになる。第二次世界大戦中に、ティエリ・モニエとの共同で2冊のフランス詩選を、ジャン・ポーランの力添えで『フランス宗教詩華選』をガリマール社から出版する。
1946年、ポーランがガリマール社でカイエ・ド・ラ・プレイヤード(当時発行停止中のNRF誌に代わるガリマール社の文芸誌)を創刊した際、編集事務局長として参加、ポーランとの緊密な協力関係(これはしばらくして親密な私的関係に発展し、この関係は1968年の彼の死まで続くことになる)がこのとき始まる。1950年にはガリマール社の原稿査読委員会のメンバーとなり、1953年にNRF誌がポーランとマルセル・アルランの共同編集のもとに再スタートした際には、同誌の編集事務局長に就任する(この肩書きは、彼女が高齢により実質的な職務を離れてからも亡くなるまで名誉職的に維持された)。
権威ある批評家として、批評家賞、ポール・ヴァレリー賞、フェミナ賞、フェネオン賞などの重要な文学賞の審査員を務め、また1974年には政府の文芸諮問委員会のメンバーに任命された。翻訳家、英米文学の専門家として、A.C.スゥインバーン、J.ホッグ、J.C.ポーイス、V.ウルフ、T.S.エリオット、S.フィツジェラルド、E.ウォーなどの作品をフランスに翻訳、紹介している。また三島由紀夫の『憂国』、『真夏の死』も英語版から翻訳している。
小説家としてはただ一作を残すのみである。すなわちポリーヌ・レアージュ Pauline Réage名で1954年に発表した『O嬢の物語』で、その出版にあたっては本人の名前は堅く秘密にされた。この小説の最後の章をなす部分は1954年の『O嬢の物語』出版時には削除され、1969年に、「恋する娘 Une fille amoureuse」と題される序文を伴って『ロワッシーへの帰還 Retour à Roissy』として出版された。1975年にはポリーヌ・レアージュとしてレジーヌ・ドゥフォルジュとのインタヴュー集、『Oは私に語った O m'a dit』を発表しているが、オリー自身は、『O嬢の物語』の作者かどうかに関わる質問にはずっと回答を拒否してきた。彼女が公にポリーヌ・レアージュその人であることを言明するのは、1994年になってニューヨーカー誌に対して行ったインタヴューにおいてである。1998年4月26日夜から翌日未明にかけて死去。翌1999年には、1988年に死後発表を条件にテレビ局によって収録されたインタヴューをもとにした、『天職は陰にまわること Vocation: clandestine』がガリマール社から出版された。ポーリーヌ・レアージュ
主な参考資料 : D. Aury, Vocation: clandestine (Paris, Gallimard, 1999); "Hommage à Dominique Aury",NRF n° 550 (June 1999), pp. 153 - 193; Le Monde, l'HumanitéのAury関係記事 (see the detailed list); “Dominique Aury”, Yahoo! Encyclopédie; F. Badré, Paulhan le juste (Paris: Grasset,1996); Repères biographiques de Jean Paulhan, La Société des lecteurs de Jean Paulhan ウェッブサイト.
By Autel (Ver.1, December 2002)
→『ドミニク・オリーをめぐって
→『O嬢の物語』をめぐるタイムライン
作品・業績
(リンク先は紹介・解説・内容目次など)詩作品
- Songes (Mazamet, Babel Editeurs, s.d.)
評論集
- Lecture pour tous (Paris, Gallimard, 1958)
- Lecture pour tous II, préface de Jean Roudaut (Paris: Gallimard, 1999)
インタヴュー
- Vocation: clandestine, entretien avec Nocole Grenier (Paris: Gallimard, 1999)
編集・校定作品
詩選集
- Thierry Maulnier and Dominique Aury (ed.), Introduction à la poésie française, Illustrations poétiques choisies avec la collaboration de Dominique Aury (Paris, Gallimard: 1939)
- Poètes précieux et baroques du XVIIe, Introduction de Thierry Maulnier; Choix de poèmes et notes de Dominique Aury (Angers: J. Petit, 1941)
- Anthologie de la poésie religeuse française (Paris: Gallimard, 1943, rep. 1997)
- Jean Paulhan and Dominique Aury (ed.) La Patrie se fait tous les jours: textes français 1939-1945 (Paris, Editions de Minuit: 1947)
- Jean Paulhan and Dominique Aury, Poètes d'aujourd'hui Préface de Jean Paulhan; Textes réunis par Dominique Aury et Jean Paulhan (Paris et Lausanne : Editions Clairefontaine, 1947)
校注
- François Villon, OEuvres complètes Préface, établissement du texte et notes de Dominique Aury (Lausanne : La Guilde du Livre, 1948)
翻訳、翻訳書への序文
see Dominique Aury as translator
ポリーヌ・レアージュ名による著作、インタヴュー
see Dominique Aury as Pauline Réage
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